ソシエダ久保建英が“幻ゴール”に悔しさ、ハーランド弾と比較「なんであれが…」
バジャドリード戦で久保がゴールも直後に取り消し
スペイン1部レアル・ソシエダの日本代表MF久保建英が10月22日、アウェーで行われたラ・リーガ第11節バジャドリード戦でリーグ戦7試合連続出場。前半終了間際のスーパーゴールは幻となり、チームの連勝もストップした。
クラブ史上のタイ記録となる公式戦8連勝を達成し、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の3位に浮上した好調ソシエダは、3試合連続で中2日の試合を戦い、バジャドリード戦を迎えた。疲労が懸念されるなか、イマノル・アルグアシル監督は先発メンバー4人を入れ替えた一方、久保を再び先発起用した。体調不良で外れたエースのアレクサンデル・セルロートの代わりにカルロス・フェルナンデスが入り、2トップの右に久保が入るダイヤモンド型の4-4-2でゲームを開始した。
バジャドリードは前節、大雨の中でセルタ相手にシステムを5バックに変更し、ホームで4-1の大勝を飾り勢いに乗る相手。立ち上がりからソシエダがボールをキープするも、なんとなく嫌な雰囲気が漂い始めていく。
前半11分、バジャドリードはモンチュのクロスがそのままゴールに入るが、直前の場面でオスカル・プラノがファールを取られノーゴールに。しかしその5分後、セルヒオ・レオンが先制点を記録した。
1点を追う展開となったソシエダは、再び5バックを敷くバジャドリードの堅固な守備を崩すことができない。久保は序盤、チーム同様に相手の厳しいチェックに苦しむが、いつものように前線でハイプレスをかけて守備に貢献しつつ、時折左サイドに流れながらプレーゾーンを広げていった。これにより徐々にスペースができ始める。そして前半37分に右サイドからカットインして放ったシュートが枠を外れた後、前半終了間際の45分、ペナルティーエリア手前でパスを受けると相手DFと対峙しながら左足を振り抜き、鮮やかなミドルシュートをゴールネットに突き刺した。
これは期限付き移籍でヘタフェに所属した2020-21シーズンのラ・リーガ第37節レバンテ戦の終盤に、チームを1部残留に導いたスーパーゴールを彷彿とさせるものだった。しかし喜びも束の間、その前のプレーでマルティン・スビメンディにファールがあったと判断され幻となってしまった。
ハーランドのゴールを引き合いに出した久保「俺のがファウルなんだって」
久保は試合後、このシーンについて、同日に行われたプレミアリーグのマンチェスター・シティー対ブライトンでアーリング・ブラウト・ハーランドが相手選手と激しくぶつかったあとに記録した先制点を引き合いに出し、次のような印象を語った。
「今、控室でハーランドのゴールを見て、なんであれがファウルじゃないのに、俺のがファウルなんだってちょっと……」と話し、「(ハーランドのほうが)明らかにぶつかっているので、あれがファウルじゃなかったら今日のも……」と、スビメンディのファールが取られたことに対する悔しさを口にしていた。 雨足がさらに強まった後半開始後もソシエダはエンジンがかからず、時間だけが経過していく。久保は前半同様に前線で動き回るも、ボールをもらう頻度が減り、後半29分にピッチを退いた。
ソシエダはその後、後半38分にスビメンディがゴールネットを揺らすが、アシストしたジョン・カリカブルがオフサイドでノーゴール。2度のゴール取り消しでVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)に苦しめられ、公式戦9試合ぶり、リーグ戦6試合ぶりの敗戦となった。 久保はこれを受け、「僕もチームもいつかこういう日が来るのは分かっていた。ここからすぐに切り替えて、次でしっかりシャットアウトして、勝ち星を積み重ねていきたい」と敗北にも落ち着いた様子を見せていた。
地元紙は久保を絶賛「取り消されたことは残念」「連係し、いいシュートを打った」
スペインメディアは幻のゴールを決めた久保について、以下のように評価した。
ソシエダの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「敵陣で最も奮起した選手だったが、ゴラッソが不明瞭なファールで取り消されたことは残念でならない。右サイドでハビ・サンチェスを翻弄し、左サイドに時折流れ、インサイドではチームメイトと連係し、何本かいいシュートを打った」と絶賛し、スビメンディと並ぶチームトップの4点(最高5点)を付けた。
一方、もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「闘争心あふれ、攻撃のあらゆるシーンに姿を見せた。ゴラッソを決めたがスビメンディのファールで取り消しとなり、最後はスタミナ切れが目立っていた」と寸評し、6点(最高10点)と評価。スペイン紙「マルカ」「AS」の久保評価は、ともに1点(最高3点)だった。
スペインの国営ラジオ局「RNE(ラジオ・ナシオナル・デ・エスパーニャ)」でバジャドリードを取材するフェルナンド・カルデナル・アレーナス記者は、バジャドリード戦での久保のパフォーマンスを次のように分析した。 「前半はクボがチームで一番動き、休むことなくボールをひたすら求めていた。攻撃は基本的に彼をすべて経由していたように思う。常にプレーに絡もうとする意欲があり、非常にダイナミックで、ボールを持った時の技術が優れている。また私はレアル・ソシエダの前線3枚(久保、ダビド・シルバ、セルロート)にブライス・メンデスらを加えた攻撃陣を気に入っているよ。彼らには勢いがあるからね」と高く評価した。
また同記者は久保を昨季と比較し、「マジョルカの時よりも出場時間が増えたことで責任感が出ており、それがプレーにも表れている。ステップアップを果たした今、注目すべき選手の1人だよ。スペインと対戦するワールドカップ(W杯)でも楽しみな存在だ」と印象を述べていた。
ここまで11試合2得点2アシストの久保「コンディションはめちゃくちゃいい」
久保のラ・リーガ成績は11試合(先発10試合)、769分出場、2得点2アシスト。W杯開幕前まで過密日程が続き、休むことなくこの後、27日に首位突破を目指し、UEFAヨーロッパリーグ(EL)グループステージ第5節でオモニア(キプロス)と対戦する。
久保はチームでも特に出場時間の長い選手の1人であるため、連戦による疲労が大いに気になるところだが、「個人的にコンディションはめちゃくちゃいい」と、これまでにないほどの力強さを感じさせてくれた。
W杯開幕まで1か月を切った。まだ久保にはベティスやマンチェスター・ユナイテッド、セビージャなど、難しい相手との試合がいくつも残されており過酷な戦いは続くが、今のコンディションを維持したままW杯に臨めれば、大会で非常に面白い存在になるかもしれない。